令和4年度栃事研運営方針
1 運営方針
学校は、社会情勢がどのように変わろうとも子どもたちの安全安心を第一に考え、子どもの学びをいかに保障し、充実させていくか、この命題に確実に取り組んでいかねばなりません。子どもたちや教育をめぐる環境が複雑化、多様化、高度化する中、学校は、「安全安心な生活の場」「多様な学びの場」として機能し、子どもたちや保護者、地域社会の「願い」を共に実現していくという重要な役割を果たしていくことが求められます。そのために常に何ができるのか、何をしなければならないのかを見出し、考え、実行していくことが大切です。だからこそ学校マネジメント力の向上が必要であり、教職員のみならず地域や保護者を含めた「組織的取組」が不可欠になります。その中で、マネジメントを主たる業務とし、事務をつかさどる職となった私たち事務職員の「役割」はますます重要であり、
「仕事」として教育活動の円滑な実施に尽力していかなければなりません。
国や県においては、小学校では令和2年度から、中学校では3年度から新学習指導要領のもとで、「カリキュラムマネジメント」が導入されています。3年2月には「栃木県教育振興基本計画2025」-とちぎ教育振興ビジョン-が策定され、教育の目指すべき方向性を示し、5年間でとちぎの目指す子ども像、教育の在り方、実行に向けての条件整備などが示されています。
学校事務、事務職員の分野においては、既に職務規定の改正や共同学校事務室の法制化がなされ、職務内容の参考例も示されました。3年1月の中教審答申「令和の日本型学校教育の構築を目指して~すべての子どもたちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」では、多様な人材が指導に携わることのできる学校の実現や教師同士の役割の適切な分担とともに事務職員について、「事務職員の校務運営への参画機会の拡大を図ること」が明示されています。
栃事研ではこのような動向を踏まえ、元年度に策定した「第2期とちぎ学校事務ビジョン」と実行策「とちぎサクセスプラン」、中期研究計画の成果と課題を分析・検証して、子どもの学びの充実を図る事務職員の姿と実践の具体化を進めるべく活動してきました。ビジョンと研究計画の2本の柱で全体活動とこれまでの研究、研修活動における実績から新しい時代へ向けた活動のさらなる充実を目指していくことを考え、4年度も引き続き研究主題を「子どもの学びの充実を図る学校事務」としました。
変化の激しい時代にあっても、子どもたちが自ら学び、育ち、成長していく力を身に付けていくためには、学校の果たす役割、そして私たち事務職員の役割・機能、行政や地域との連携の在り方などの研究をさらに進めていく必要があります。また、研究主題である「学びの充実を図る」ということは、各事務職員が各学校において、実践・行動するから達成すべきものであるという考えに基づいています。これは、事務職員が学校において教職員や、保護者や地域と協働していくこと、学校関係諸機関、諸団体と連携していくことにより果たされていくことになります。共同学校事務室内においてもその質を高めるためにチームを意識した活動、組織やチームによる仕事の推進が不可欠になります。
具体的には、「カリキュラムマネジメントへの参画」「共同学校事務室の質の向上」と「事務職員の力量形成」を主体として研究・研修活動の充実を図りたいと考えます。
「カリキュラムマネジメントへの参画」は、学校経営参画を果たした事務職員の次のステップであり新たな可能性として捉えています。学校経営がカリキュラムマネジメントそのものになりつつある中、これまで以上に大きなマネジメントが働くことになります。全国公立小中学校事務研究大会埼玉大会分科会で研究部が提案した、学校経営ビジョンの「実現」と「策定」への参画を踏まえ、実践を通した事務職員の力量形成、共同学校事務室の質の向上の研究を進めていきたいと思います。
「共同学校事務室の質の向上」は、組織リーダーとともにメンバー一人一人のマネジメント力が問われます。特に、組織を構成するメンバーやフォロワーの存在が重要となります。若年層の意識の持ち方や行動力、それを支えるリーダーの存在が組織力を高めていきます。共同学校事務室が法制化された今、それを基盤として、業務改善を推進し、学校のマネジメント強化に尽力していく必要があると考えます。共同学校事務室自体は、市町の教育推進に寄与していくことになりますが、栃事研として、その進捗状況や、在り方、仕組み、効果など把握し、提供することで全県的な広がりと内容の充
実を図っていきたいと思います。
「事務職員の力量形成」では、教育の質の向上やマネジメントの推進者としての役割や機能、仕事を果たしていくために必要な力量や学校と地域のつながりを深めていく役割などについて研究を進めます。そこで、社会の変化に伴い、実態や現状に合った形・内容に変えていくことや地区・支部と栃事研の役割を明確化にするため、「研修の体系化」を見直し、整備したいと考えます。研修は、身に付けた力量が学校現場に還元し、活かされて初めて「成果」になります。そこではまさに「実践力」が求められます。「仕組み」と「内容」で育てるとちぎの研修の一層の充実を図り、経営参画を果たす事務職員の育成を進めていきたいと思います。
「第2期とちぎ学校事務ビジョン」は継続し、3年度に行ったアンケート結果を基に、ビジョンの目標である「学校経営参画」の達成度や進捗度などを分析し、学校現場への効果や成果、課題を踏まえ、実効策「とちぎサクセスプラン」の5年度以降の活動計画を検討したいと考えています。
「中期研究計画」は、年次別課題「共同学校事務室」とし、とちぎの学校事務実現のための基盤となる共同実施が共同学校事務室としての拡がりを期待するとともに、共同実施組織が主体となり学校の業務改善やマネジメント力の強化に貢献できる提案や、アイデア提供を図っていく組織であるよう条件整備について栃事研としての支援策を考えます。
一方で、大量退職期が過ぎ、主事・主任層の増加、再雇用制度や定年延長制度の実施など事務職員の構成もこれまでとは大幅に変わってきます。将来を見据え、時代にあった栃事研の役割や組織について検討していく必要があると考えています。そこで、4年度は検討委員会発足の準備年度とし、新たな栃事研づくりに向けた組織づくりに取り組んでいきます。
4年度も様々な形で制限された活動となることが予想されます。これまでの経験や反省を生かし、知恵を出し合い、各専門部を含め組織全体で工夫して活動していくことが大切です。しっかりと目標を立て、達成に向け活動を進めていただきたいと思います。栃事研役員一同、総力をあげて真摯に取り組んでいきたいと思います。
(1)活動目標
① 子どもの学びづくりを図るため、学校経営に参画する事務職員の実践力・行動力を高める。
② 「第2期とちぎ学校事務ビジョン」を継続し、学校経営参画を目指す。
③ 事務長制の重要性を踏まえ、学校事務職員制度の充実・発展に向け、学校事務の未来像を追究する。
④ 各支部、各関係諸機関・団体等とのより一層の連携を深め、学校事務及び事務職員の課題解決を目指す。
⑤ 栃事研の行う全ての事業を通して、学校事務の質、共同実施の質の向上を図り、教育の質の向上に寄与、貢献する。
(2)目標達成のための具体策
① 「第2期とちぎ学校事務ビジョン」を継続し「とちぎサクセスプラン」令和5年度以降の計画を検討し、子どもの学びづくりへの参画に向け、全県的な実践活動に結び付ける。
② 事務職員の職務規定の改正や共同学校事務室の法制化に伴い、その具体化を図るため研究を進める。
③ 「研修の体系化」に基づき、研修プログラムの活用促進とプログラムに基づいた研修の充実に努める。
④ 「研修の体系化」を見直し、事務職員の資質能力向上・力量形成に向け、研究・研修の充実と工夫改善に努める。
⑤ 学校事務の未来を見据え、関係諸団体と連携しながら事務長制を中心とした事務職員制度の充実を目指す。
⑥ 教育の質の向上に向け、栃事研の行う諸活動、諸事業を通して、その基盤となる学校事務、共同実施の質の向上を目指す。
⑦ 調査・広報活動の更なる充実を図り、情報の収集・提供を積極的に進め、各支部及び市町における研究・研修活動の充実、支援に努める。
⑧ 栃木県教育委員会、栃木県小学校長会、栃木県中学校長会、栃木県公立小中学校教頭会等関係機関、全国公立小中学校事務職員研究会、関東地区公立小中学校事務職員研究協議会及び関係諸団体との連携を深め、相互理解のもと課題解決に努める。
⑨ 本会事業及び諸会合の精選を図り、効率的な運営に努める。
⑩ 令和5年度開催の関ブロ群馬大会分科会提案に向け準備を進める。
⑪ 新たな栃事研づくりに向け、準備を進める。
(4)専門部活動の重点
各専門部間は一層の連携を深め、相互支援のもと有機的に結び付いて活動していくことが重要であると考えます。特に本年度は会議・研修の機会をもつことが難しい中ですが、メールなどを活用して情報を発信し共有しながら、相互理解を深め、協働のもとそれぞれの役割をしっかりと認識して活動を進めていただきたいと思います。
① 研修部
年次別課題を達成するための研修の企画運営を行っていただきたいと思います。また「研修の体系化」を進めるための、系統的・継続的な研修を実施し、確実に学校経営参画を果たせる事務職員の力量形成を図っていただきたいと思います。そのためには、目的を明確にし、「研修-実践-実証」のサイクルを定着させ、研修内容の充実を目指します。活動が制限される中ですが、研修の在り方、人材育成について更に見識や経験を深め、とちぎの事務職員のこれからの資質能力向上について検討していただきたいと思います。
・年次別課題達成のための研修を企画運営する。
・プロジェクトチームと連携し「研修の体系化」の見直しを図る。
・各地区、各支部との連携を強化し、実行・還元・連動を念頭においた研修の在り方を引き続き検討する。
・これからの学校事務、事務職員の在り方を念頭においたステージ別研修等の企画運営を検討する。
・研修成果の検証システムの具体化を図る。
・栃木県公立小中学校事務研究大会の共同企画運営にあたる。
② 研究部
事務職員の学校経営参画の具体を示し、事務職員が自信をもって実践に結び付けていけるよう、共同実施を基盤として、子どもの学びづくりにつながるそして事務職員の未来につながる学校事務、事務職員の仕事を示していただきたいと思います。研究のための研究ではなく、これからのとちぎの学校事務、事務職員の指針となる研究を確立していただきたいと思います。
・引き続き、これからの学校事務、事務職員の在り方を検討する。
・学校経営ビジョンの実現と策定への参画について実践に基づく研究を進める。
・栃木県公立小中学校事務研究大会の共同企画運営にあたる。
・全国公立小中学校事務研究大会(埼玉大会)兼第53回関東地区学校事務研究大会において未来につながる学校事務、事務職員の役割、仕事について提案する。
③ 調査部
調査活動は、栃事研が行う事業や活動の根幹となる情報を収集、蓄積していただきます。会員のニーズを把握し、活きた情報を提供するために、引き続き充実した活動に努めていただきたいと思います。
・会員へのタイムリーな情報の収集、提供に努める。
・共同実施に関する情報を県内外から収集し、提供する。
・学校事務の将来予測に関する多様なデータ等の収集と蓄積を行う。
・研究、研修活動を支える様々な情報の収集や提供に努める。
・栃木県公立小中学校事務研究大会の共同企画運営にあたる。
④ 事務局
栃事研が、円滑に事業活動を行うには、事務局による事前調整や会務の運営、財務運営が不可欠です。栃事研では、関係諸機関、関係諸団体等との連携や会員への周知活動、パブリシティの推進など多様な活動を行い、年々その重要度が増し、仕事が多岐に渡っています。重要度が増していく中でも、組織内の連絡調整をしっかりと行い、あわせて活動内容の精選と見直しにも努めていただきたいと思います。
・効果的、効率的な会務運営に努める。
・HPの充実を図り、会員との情報の双方向性の関係を構築する。
・会報について創意工夫に努める。
・「とちぎの学校事務」の内容の充実に努める。
・財政の充実を図る。
・県教委、校長会、教頭会、栃教協、事務長会、県立学校事務職員会など関係諸機関・団体等との連絡調整を図り相互理解、交流の場の設定などにあたる。
・事務職員の交流事業、研究交流・派遣事業について企画運営を行う。
⑤ 研究プロジェクトチーム
「第2期とちぎ学校事務ビジョン」及び「サクセスプラン」の検証、研修の体系化の見直しを行っていただきたいと思います。
・「第2期とちぎ学校事務ビジョン」の目標である「学校経営参画」の達成度や進捗度などを調査分析し、学校現場への効果・成果・課題を検証し、次期ビジョンにつなげる。
・研修部と連携し、研修の体系化の見直しを図り、会員並びに関係諸機関への周知活動を行う。
・栃木県公立小中学校事務研究大会の共同企画運営にあたる。
2 行動指針
この指針は、栃事研の目指すべきミッション、研究主題に示される理念に込められた価値観を基に、これまでの成果と課題を踏まえ、「これからのとちぎの学校事務の創造」に向けて、一人一人が事務職員としての職務、栃事研の役員としての職務を遂行する上で必要な方向性を示すものであり、行動の基本的考えとなるものです。
これまでに積み重ねてきたことをしっかりと胸に刻み込み「第2期とちぎ学校事務ビジョン」にありますように、新しい時代の学校事務を創造していただきたいと思います。
(1)信頼
信頼は、いつの時代にあっても組織にとっての基盤であり、仕事をしていく中で、最も重要なものです。信頼される学校づくりのためには、事務職員(仕事)としての専門的信頼と、豊かな人間性を築く人間的信頼を、関係する全ての方から築きあげなければなりません。明確なビジョンに基づき、確かな活動を進め、成果を上げていただきたいと思います。その信頼獲得が事務職員の教育における職の拡がりとともに、人として、学校事務職員としての「成長」につながっていくと考えます。
(2)責任
栃事研は、各地区や支部との連携を通して、会員の成長(知識・技能・経験)を促す役割をもっています。それは組織を担うものとしての「責任感」の醸成につながります。栃事研役員として活動するにあたり、そのことをしっかりと認識していただきたいと思います。
栃事研は任意団体ですが、各関係諸機関、社会に対して責任をもって目的を達成していく団体です。ぜひそのことを認識していただき、活動を進めていただきたいと思います。また同時に、栃事研で活動することで役員の皆様の成長も図られると思います。栃事研は基より、地区・支部等で中心的な役割を担う人材になっていただきたいと思います。